消費電力30%低減!1948年創業、青森の大青工業が実現したIoT導入による冷蔵冷凍設備の省力化
Client
大青工業株式会社
青森県青森市に拠点を置く、1948年創業の冷蔵冷凍設備の製造開発、販売、メンテナンスを行う企業。「冷熱をデザインする」を理念に、野菜、果物、水産物等の高品質・長期鮮度保持に取り組んでいる。
ヘプタゴンが
お手伝い
したこと
- IoTセンサーや3Dカメラ、AIによる画像判別などで必要最小限のコストで庫内状況を可視化
- 庫内の適切な熱量供給、風量制御で3.6%から4%程度の電力量削減、装置としては全体で30%程度の電力量削減を実現
- 庫内状況を数値化したことで、自社開発の冷蔵冷凍設備の「省力化」と「品質保持」を両立
1948年に創業された大青工業株式会社は、冷蔵冷凍設備の開発・製造を行ってきた青森県の老舗企業です。同社は、技術的な挑戦を絶え間なく続けており、近年では AWS の活用による「冷蔵冷凍設備の遠隔監視による異常検知システムの構築」をヘプタゴンとともに実現しました。
そんな同社では、新しいプロジェクトとして3Dカメラを使った庫内の状況の可視化を推進しており、ヘプタゴンが技術的な支援を実施。支援前の課題と支援後の効果について、同社技術本部 IoT 主任 米塚 明央様 (以下、米塚様) にお話しいただきます。
1948年創業から技術的挑戦を続ける青森県の老舗企業
── 大青工業様の事業概要と、米塚様の担当業務について教えてください。
大青工業は1948年に青森県青森市で創業し、冷蔵冷凍設備の製造開発、販売、メンテナンスを事業とする企業です。「冷熱をデザインする」を理念に、野菜や果物、水産物等の高品質・長期鮮度保持に取り組んでいます。
私は技術本部で IoT 主任を担当しています。技術本部では、新規事業推進や社内業務の効率化を目的に、IoT や AI など最新技術の導入を行う部署です。これまで IoT や AI を活用した冷熱装置の制御や新しい機器の開発、各部署と連携した社内業務のデジタル化などを行い、最近では IoT コントローラー制御のコンテナ型冷蔵庫の開発をしています。
冷蔵冷凍設備を扱う企業責任として省力化・品質保持の両立が課題
── 技術本部のミッションと、直面した課題について教えてください。
技術本部は「顧客満足度の改善」を軸とした、お客様が使いやすい冷蔵冷凍設備の追求がミッションです。機能の掛け合わせで使いやすいインターフェースを試行錯誤したり、プラットフォーム横断で様々なデータを活用することで顧客体験を改善したりしています。最近では AI を活用して「故障予知」「簡易警報装置による客先の修理コストの低減」「作業員の時間コストの削減」を実現しました。
次に私たちが直面した課題は、冷蔵冷凍設備の省力化と品質保持の両立です。従来は冷熱に要する消費電力と庫内食品の鮮度と品質は比例していましたが、技術発展によってエネルギーや人的・金銭的コストをそれほど費やさなくても鮮度と品質の保持ができるようになりました。また、昨今の電気代高騰に伴い、お客様から冷凍冷蔵設備の省電力化を要望として多く頂いています。
冷蔵冷凍設備の維持費はその約8割が電気料金なので、電気代高騰はお客様にとって喫緊の課題です。お客様が抱える課題を解決するには、余分に電力を使用せず、食品の鮮度維持ができる技術革新が当社の冷蔵冷凍設備に必要でした。
技術本部で解決策を検討した結果「庫内状況に適した冷熱エネルギーの供給・循環を行えば、省力化と品質保持は両立できる」という発想に至り、ヘプタゴンへ3Dカメラを用いた冷蔵冷凍庫内を可視化する業務を依頼するに至っています。
ヘプタゴンの支援によって冷蔵冷凍設備の省人化を実現。電気料金の4%、約20万円を低減
── ヘプタゴンの支援内容とその成果について教えてください。
ヘプタゴンには必要最低限の費用と工数で、IoT センサーや3Dカメラ、AI を用いた画像判定などによる庫内状況の可視化を実現していただきました。カメラによる遠隔監視による入庫判断と入庫料の把握を行い、冷熱エネルギーの循環風量を庫内状況に合わせて柔軟に変えられることで、冷蔵冷凍設備の省力化につながっています。
また、一つの冷蔵冷凍設備には管理要員が一人必要になるのですが、入庫状況を IoT センサーや AI による画像判定で詳細に把握し、数値化が可能となったので、設備管理の省人化も実現できました。
── 取り組みを通じて、具体的に何%ほど消費電力を削減できましたか?
冷蔵冷凍設備の消費電力は、冷凍機の圧縮機を稼働するための電力と、貯蔵空間に冷風を循環させるファンが消費する電力の二つで主に構成されるため、これらを適切に制御すれば、維持費用の8割を占める電気料金は抑えられます。
ヘプタゴンの支援を通じて導入された3Dカメラや IoT センサーで、季節や設置環境等の外的要因や除霜時加熱等の庫内状況を詳細に把握し、それに対応した適切な熱供給と風量制御を遠隔で行えるようになりました。
3Dカメラや IoT センサーを導入した設備の消費電力は、直近の試験で入庫量と熱量感知による純粋削減部分で3.6%から4%程度(※)、装置全体としては30%程度の電力量削減、電気料金に換算すると平均20万円/年の費用削減を実現しています (※ 熱源感知による制御と組み合わせて算出)。
大型化した設備で使用すれば、入出庫の頻度増加により、消費電力の削減効率はさらに上がるでしょう。
大青工業の次なる挑戦は冷蔵冷凍設備のシェアリングサービス
── 技術本部として新たに挑戦しようとしているプロジェクトについて教えてください。
本取り組みで得られた3Dカメラの知見を活かして、冷蔵冷凍庫の空き状況を把握してリアルタイムに貸出しする「シェアリングサービス」に挑戦したいと考えています。
私たちのお客様である生鮮食品の卸売事業者は、生鮮食品が余剰に生産されたとき、空いている冷蔵冷凍保管庫を都度探しているのが現状です。このとき庫内の温度帯や空間量の確認といった要件の確認から契約手続きまでを、毎回やらなければならず負担になっています。
そこで私たちが冷蔵冷凍庫の空き状況をリアルタイムでお知らせできるサービスを提供できれば事業者の方にも喜ばれますし、冷凍冷蔵設備の運用効率も上げられるでしょう。プロジェクトで得られた技術的な知見を事業推進に活かしていくためにも、ヘプタゴンの伴走支援をこれからも期待しています。