移住政策にチャットボットを活用!AIが巧みに会話を盛り上げる、LINE で広がる移住の輪
Client
青森県三沢市政策調整課
青森県三沢市は、青森県東部にある人口約 37,000人の都市。在日米軍三沢基地を有する国際色豊かなまちで、政策調整課ではその特色を活かすべく、様々な政策提言を行っている。
ヘプタゴンが
お手伝い
したこと
- LINE 公式アカウント上で動作する AI チャットボットの構築と導入を実施
- AWS と SaaS を組み合わせることで、構築と運用のコストを抑えたサーバレスなシステム構成を実現
- 移住・定住について寄せられた問い合わせがこれまでの10倍以上に!
(この記事は株式会社ヘプタゴンとわとな株式会社のタイアップ記事です。)
コロナ禍においてテレワーク等の働き方改革も進んできた昨今、大都会を離れて地方へ移住したいという方たちが増えているといいます。すなわち地方では今こそ、移住政策を積極展開するチャンスではないでしょうか。とはいえ、全国各地の自治体が移住政策に取り組んではいるもののどこの地域も苦戦されているようです。こうした中で、青森県三沢市では移住に関する情報提供をより若い人たちにリーチさせていくために、LINEを使った移住相談の取り組みを始めました。三沢市の市報『広報みさわ 12月号』で大きく取り上げられ、話題となっています。さっそく三沢市役所のご担当者様をお訪ねしました。
1【移住希望者と三沢市とをLINEでつなぐ】
『広報みさわ 12月号』の誌面でLINEを使った移住相談を紹介していたこの男性は、じつは三沢市役所で移住政策を担当されている若手のホープ 、三沢市政策部政策調整課企画戦略係 主事の長根健さんです。長根さんと、同政策部政策調整課 企画戦略係長の馬場洋一郎さん、そして三沢市のLINEを使った移住相談のシステム開発を手掛けた株式会社ヘプタゴン 代表取締役の立花拓也さんにお話を伺いました。
三沢市は「住みたくなる街」を目指し、人口減少解決のために移住定住情報の発信を積極的に行っています。今回ご紹介するLINEの活用以前には、ホームページでの情報発信のほかに東京都での移住フェア、相談会などを通じて情報提供を行っていたそうです。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて相談会等の対面での情報提供活動ができなくなりました。そこで新たに、移住希望者と市役所の担当者とをつなぐ取り組みとしてLINEを活用することに至ったのだそうです。
三沢市への移住を考えている方をLINEでサポートする事業として、2020年12月22日にリリースされたこのサービスの正式名称は「みさわしつじ」です。三沢市移住相談専用のLINE公式アカウントで「みさわしつじ」を友だちとして追加するとチャットができるようになります。
2【みさわしつじで目指すこと】
「みさわしつじ」について、さっそく伺いました。
「特徴は3つあります。特徴1つ目は移住相談会などに足を運ばなくても、みさわしつじが移住に関するさまざまな質問にいつでも回答することです。2つ目は、皆さんからの質問のデータが蓄積され、三沢市の政策に生かされます。3つ目は、そのほか三沢への移住に役立つ情報が更新されると三沢市からお知らせが届くことです」(長根さん)
なるほど、三沢市への移住に関心を持った方にとても役立ちそうです。相談会などに行けなくても情報が得られるというのは、とても便利だと思います。コロナ禍の今の状況において、出歩かずにスマートフォン1つで情報にアクセスできる環境を整えることは重要ですし、需要もあるのではないでしょうか。
LINE上で移住相談を解決したいということから「みさわしつじ」は生まれました。また、「皆様から提供された個人情報は活用しません。安心してご利用ください。」とのことです。気軽に安心して相談ができますね。三沢市から届くお知らせには、住宅取得費用助成情報、移住相談会開催情報などがあるそうです。
ところで、「みさわしつじ」の名前の由来は?
「みさわし、執事、ひつじを掛けてこのネーミングに決まりました。三沢市への移住に興味を持ってくれた人への情報提供を行いますが、ちょっとおかしな南部なまりで話すキャラクターとしています。ガイドさんのように旗を持ちたいのですが、手が短くいまいちなので、オムライスの旗のように頭に刺しました。ベルトにはMサイズの文字がありますが、これはミサワサイズの意味です。背中の戦闘機のようなバッグで飛びたいのですが、エンジンを点けるとしっぽが焦げるので紐で吊って飛んでる気分にしています」(長根さん)
みさわしつじのデザインは、三沢市へUターンされてきた方が制作されたそうです。みさわしつじのネーミング候補も紆余曲折あったそうで、最初は「みさわに」(三沢と鰐を掛けた)や「みさわし」(三沢と鷲)といった候補もあったそうですが、執事として三沢への移住をサポートするという使命の元、この「みさわしつじ」が誕生したのだそうです。
3【アメリカ文化と隣り合わせが魅力の三沢市へ】
「LINEでの移住相談は12月にリリースし、広報みさわ 12月号で紹介しましたが、これは年末年始で帰省された方に知っていただきたいという目的がありました。
また、みさわしつじ以外にも色々な移住政策の取り組みがありますよ。たとえば、住宅を取得すると最大で330万円の助成金を支給する住宅取得支援事業もあります。三沢市といえば、米軍と自衛隊の基地があることで有名ですが、基地周辺はアメリカンな街並みを楽しむことができます。アメリカ文化と隣り合わせの生活ができる魅力的な街です。
三沢市ではふるさと納税も受け付けていますが、もともと往来者が多い三沢市だけに、三沢市にゆかりを感じて県外に引っ越された後もふるさと納税してくださる方が多いです。」(馬場さん)
※住宅取得支援事業は新築・中古を問わないそうです。
LINE以外のSNSの活用は検討されているのでしょうかという質問に対しては
「Twitter、Facebookは市役所側から情報を発信する手段ですが、興味がない人には情報が流れてしまうことが多いです。移住者のターゲットは一定の移住に興味がある人と考えているので、相互のやり取りができるLINEを活用することにしました。今後はTwitterやFacebookと組み合わせてうまく活用していきたいですね」(馬場さん)
とおっしゃっていました。
4【実際にみさわしつじを試してみた】
みさわしつじをLINEの友達に追加して、さっそくメッセージを送ってみました。「こんにちは」と送ると「ハローーーーー!!」という旗を持ったみさわしつじの画像が届きました。とてもかわいいキャラクターです。「三沢って暖かいの?」と聞いてみると、メッセージで地形や町の位置情報が送られてきました。きちんと答えてくれます。みさわしつじのキャラクターデザインは季節によっても変化するそうです。今後どんなバリエーションが登場するのか楽しみですね。
さらに、AI(人工知能)応答メッセージという機能があり、受信したメッセージにAIが内容を判断して適切なメッセージを返信します。「みさわしつじ」の脳といえるAI部分を開発したのは、三沢市のIT企業である株式会社ヘプタゴン 代表取締役の立花拓也さんです。
「LINEのチャットボットは電話よりも簡単に質問できることから、問い合わせのハードルを大きく下げてくれます。対応の代行はもちろんですが、おしゃべりする感覚でチャットができて親しみやすいですし、愛着も湧いてくると思います。何より、日本ではすでに8,600万人以上の人がLINEを使っていますが、普段使いしているツールになっているという点でメリットは大きいと思います。簡単な会話を超えて込み入った内容やAIが答えられない場合は、市役所の長根さんたちがみさわしつじになりきって回答を返すことができるという工夫を凝らしました」(立花さん)
まだスタートしたばかりのサービスですので、今後多くの方にこの「みさわしつじ」を知っていただくことが当面の課題です。この記事を読まれた皆さまには、ぜひ「みさわしつじ」の友だち登録をお願いいたします。そして楽しい会話をしてみましょう!
現在、三沢市の公式キャラクターは「ビードルくん」という、三沢市淋代海岸から米国まで太平洋無着陸横断飛行を成し遂げた「ミス・ビードル号」をモチーフにしたキャラクターがあり、市役所の壁面にも看板が掛けられています。長根さん、馬場さんは今後「みさわしつじ」を市役所の広報などにも広く使ってもらうことを目論んでいます。実現するといいですね。
【関連リンク】
- 広報みさわ 2020年12月号 (三沢市) ※リンク先PDFファイル
- 三沢市移住サイト (三沢市)
- 移住・定住について寄せられた問い合わせがこれまでの10倍以上に!ネイティブアプリより開発工数の大幅削減が可能なLINE bot開発事例 (LINE API Use Case)
編集後記
初めてこのお話を聞いたとき、LINEで移住相談って?と思いました。調べてみると、三沢市の広報誌にたどり着きました。実際に「みさわしつじ」を友だちに追加して試してみると、かわいいキャラクターと共に、三沢市の情報も知ることができるのです。画期的で、LINEで手軽に相談できるというのも簡単でいいですよね。移住政策でLINEによる相談を受け付けている自治体は全国でもまだ珍しいのだそうです。若者をターゲットにしているという点でもよいマッチングだと思います。
取材・文:宮古沙紀(わとな株式会社 取締役/青森公立大学 学生)
システム構成
API部分はAWS、AI部分はMicrosoft AzureのQnA Maker、管理UIはGoogle Spreadsheetを使っています。
予算との兼ね合いでできるだけ構築・運用コストを最小限に抑える構成としました。スプレッドシート上でQnA Makerのモデルの学習やbotとのやりとりの可視化、botが答えられない場合の手動回答ができるようになっています。