青森県を放送対象地域とする地方局「ABA青森朝日放送」は、コロナ禍を経て、動画編集環境をオンプレミスからクラウドへ移行しました。デジタル化の素地が整った環境下で次に着手したのは、参加者が多く、話者の特定精度が求められる番組審議会の議事録の文字起こしでした。
「番組審議会の文字起こしを含めた議事録作成は3週間程度かかっていましたが、AWSのGenUを利用した生成AIの文字起こしシステムをヘプタゴンの支援で導入した結果、作業時間は1週間強程度まで大幅に短縮できた」と語る、ABA青森朝日放送 編成業務局デジタルメディア部 蛯名さんがヘプタゴンの伴走支援の効果について振り返りました。
課題
- コロナ禍の出社自粛をきっかけに、出社必須の作業だったニュース配信用の動画編集や切り出しをオンプレミス環境依存から、在宅でもできるようにする必要があった
- 定期的に開催される番組審議会の文字起こしを含めた議事録作成は、参加者が多く、話者の特定精度が求められるため作業に3週間程度かかっていた。一部を外部発注で対応していた
施策
- 編集環境に関しては、Amazon WorkSpaces を活用して、AWS上で稼働するリモートデスクトップ環境を構築。従量課金で、必要な時だけ使用できる編集環境を整備した
- Amazon Bedrockを活用した生成AIによるWebアプリケーションを作成。ひとつひとつ機能を追加し、最終的には原稿生成と議事録生成の2つのサービスを社内に展開した
結果
- Amazon WorkSpacesの利活用が進み、社内の専用端末を利用しなくてもクラウド上で作業が可能となった。在宅作業など場所を問わない柔軟な業務遂行ができ、のちの社内DX推進(AI活用など)の第一歩となった
- 生成AIアプリケーションGenU(Generative AI Use Case JP)を利用し、番組審議会の文字起こしシステムを開発。文字起こし含めた議事録作成は3週間程度かかっていたが、システム導入後はチェック前の作業が1日もかからずに完了し、作業が大幅に軽減した
- ヘプタゴンとの共同開発で青森朝日放送局内のクラウド・生成AI利活用が進んだことで、AIで「何ができるか」という枠組みで局内の業務の改善をしていく筋道が立てられた
目次
- 事業へのクラウド利活用に成功した青森朝日放送
- 青森に根付いた企業であるヘプタゴンと協業することに“意味”を感じた
- コロナ禍での出社制限がきっかけで、動画編集環境をオンプレからクラウドへ切り替え
- 番組審議会の議事録作成でAI活用。高い精度の文字起こしで3週間程度要していた議事録作成が半分以下で完了
- 生成AIの社内活用のルールを設定し、青森朝日放送局内のDXを推進したい
事業へのクラウド利活用に成功した青森朝日放送
青森朝日放送が取り組むデジタル化推進について教えてください。
青森朝日放送のインターネット関連部門では、動画配信全般と自社ホームページの管理、テレビ番組のインターネット上での二次利用を手掛けています。
同部門は近年、編成業務部、営業局コンテンツ事業部、報道制作局、そして現在は編成業務局へと変遷してきました。インターネット配信部門をどの部署に置くのが最も効果的か過渡期であるためです。マネタイズを重視すれば営業局に所属するのが適切ですし、コンテンツ生成を重視すれば報道制作局、地上波との連携を重視すれば編成業務局といったように、組織の目的によってインターネット配信部門の所属を変えてきました。
インターネットに適したコンテンツの作り方と地上波に適した作り方は多少違うとは思いますが、制作したコンテンツを展開するのにどこの所属にするのが最適解なのかではなく、いかに効率よくコンテンツを出せるかを重視しています。

青森朝日放送のデジタル推進を主導している蛯名様ですが、インターネット関連の部署としての変遷を教えてください。
私自身は青森朝日放送に1995年に入社し、最初は番組制作に主に携わっていました。その後東京支社を経験して、本社で編成の仕事をした後、インターネット配信に関する業務を担当しています。
インターネット配信の業務はすでに5年は担当していますが、肩書きは毎年のように変わっていました。冒頭で述べたように、インターネット配信部門の役割に応じて最適な所属にしているため、現在私が担当している業務は、動画配信全般と自社ホームページの管理、テレビ番組のインターネット上での二次利用促進などです。
青森に根付いた企業であるヘプタゴンと協業することに“意味”を感じた
数ある支援先のなかでヘプタゴンを選んだ理由を教えてください。
理由は2つほどあります。1つ目は青森県に根付いた企業であること、2つ目にAWSの開発実績が豊富だったことが挙げられます。
1つ目について。ヘプタゴンは青森に根付いた企業であり、青森県内の経済事情や企業文化を共有できるため、課題に対する目線合わせが円滑でした。県外のベンダーにも相談しましたが、地方企業の予算や人員の制約といった背景を理解してもらいにくいことがありました。
弊社は青森県の地域に根付いた地方局なので、全国キー局だったり、都心での課題解決手法や開発スタイルがピタッとはまらないこともあります。投資できる資金は最大限有効活用したいので、費用対効果も厳しめにみています。こうした温度感や細かいニュアンスを会話で共有できたので、ヘプタゴン社は地域に根付いた、青森朝日放送の協業先として最適でした。

2つ目。実績とヘプタゴン代表の立花さんの人柄も信頼を底上げしました。ヘプタゴン社は、県内でAWSを活用し、企業の課題解決で成果を上げているという評判を伺っていましたし、県内企業のAWS開発やクラウド事例についても、ウェブページで拝見しました。実際にヘプタゴン社の技術力は、東京の企業と遜色がないので、安心して開発をお任せできました。
何より一番の決め手は、最初の相談でオフィスに伺ったときにヘプタゴン代表の立花さんがとても丁寧に対応してくださって、自身の悩みを話しやすかったことです。コンサルとしての人柄も大きな決め手でした。
ヘプタゴンの支援を受けてどのような変化がありましたか?
実は、ヘプタゴン社に依頼する前から、自社のホームページやニュース配信システムにAWSを導入していました。AWSという名前は知っていましたが、専門性が高い技術であるほど、英語のドキュメントの読み込みに苦労したり、独学での習得に障壁を感じたりしました。ヘプタゴン社のような専門家のサポートが有益でした。
コロナ禍での出社制限がきっかけで、動画編集環境をオンプレからクラウドへ切り替え
青森朝日放送様が最初にヘプタゴンに発注したのは、コロナ禍での出社制限に対応できるクラウドベースの動画編集環境の構築でした。当時の課題感を教えてください。
コロナ禍をきっかけに、青森朝日放送でも在宅勤務の必要性が生じました。しかし、当時はシステムがオンプレミス環境であり、コロナ禍での在宅勤務に対応できなかった。特に困ったのはニュース配信用の動画切り出し作業でした。そこで、出社せずに社外でも動画編集や切り出しができる方法を模索して、AWSに相談しました。
AWSからは仮想デスクトップサービスであるAmazon WorkSpacesの利用を提案されましたが、自社での構築が難しかったため、AWSからの紹介でヘプタゴンに依頼するに至りました。

ヘプタゴンに依頼したことで、課題はどのように解決しましたか?
ヘプタゴン社の支援でAmazon WorkSpacesの利用が進んだことで、社内の専用端末を利用しなくてもクラウド上で作業が可能となり、場所を問わない柔軟な業務遂行ができ、のちの社内DX推進(AI活用など)の第一歩となりました。
導入前は、作業時は出社が必須でしたが、導入後は担当者1名が在宅勤務時でも作業を進めることができました。
番組審議会の議事録作成でAI活用。高い精度の文字起こしで3週間程度要していた議事録作成が半分以下で完了
クラウド導入によって業務のデジタル化の素地が整い、次に着手したのは社内の議事録への生成AI利活用でしたね。着手のきっかけは?
はい。私自身の社内における役割も、インターネット関連の単独業務から、他部署にまたがるようなDX推進にもわたるようになりました。その矢先に、Amazon WorkSpacesの不具合解消について立花さんと会話をしているとヘプタゴンに新しく、クラウドアーキテクトの三浦一樹さんが入社されたと伺いました。
三浦さんは前職でHTB北海道テレビに勤められていて、AWSの勉強会でも存じ上げていました。ヘプタゴンが放送局に特化した専門性の高い技術開発にも対応できると知り、番組審議会の議事録作成に関するAI活用の相談をすることになりました。
番組審議会の議事録作成におけるAI活用と検証とは具体的にどのような取り組みでしょうか?
番組審議会の議事録作成は、AWSが提供している生成AIアプリケーションであるGenU(Generative AI Use Case JP)を利用し、私自身がPoCとしてプロトタイプを構築・検証していたものでした。番組審議会の議事録は、関係者が多いので誰がいつ、どのような発言をしたのか正確に取る必要がありました。
ヘプタゴン社に依頼したのは、実用化に向けた最終調整の部分でした。事前の検証とプロンプト設計が完了していたので、システム開発は円滑に進められました。

「番組審議会の議事録作成システム」の実際の操作画面
AIによる番組審議会の議事録文字起こし作成のシステムを導入する前、1時間半の会議の文字起こしと議事録整形には3週間程度かかっていました。番組審議会は参加者が多い一方で、誰が何をいつ発言したのか正確に議事録をとる必要があることが理由です。システム導入後は、文字起こしを含めた議事録作成の完了に必要な作業時間は、1週間強程度まで大幅に短縮できました。
この成功体験をふまえて、文字起こしと資料の組み合わせは作業が効率化できるとあらためて実感しました。ヘプタゴン社との共同開発によって、業務の改善だけでなく、AIで「何ができるか」というイメージが広がり、視野が拡大しました。
生成AIの社内活用のルールを設定し、青森朝日放送局内のDXを推進したい
今後取り組みたいことは何ですか?
今後は、社内での生成AIの利活用を広げていくことを目標としており、社員のAIリテラシー向上や意識醸成が必要だと考えています。
AIは使い方次第でリスクも伴うため、暴走しないように人間が適切に制御・コントロールすることが重要です。やみくもにAIを活用するのではなく、費用対効果を考慮し、組織としてどのようにAIを活用していくか、または使ってもらうかを設計する必要があります。
具体的な取り組みとして、社内ルールの策定が検討されました。AIを社内で安全かつ有効に活用するためには、明確なルールやガバナンスの構築が不可欠です。現状を踏まえ、会社としての仕組みを整備しなければなりません。
ヘプタゴン社には、自局のオンプレミスからクラウドへの移行から生成AIの利活用まで多大なるご支援をいただきました。今後は、開発だけでなく現場の作業者が抱える課題を解消できるような提案や機能開発を期待しています。今後も綿密な連携を通じて、協力関係を継続していきたいです。