
はじめに
2025年11月27日から12月7日まで、アメリカ・ラスベガスで開催された AWS が提供する最大規模の学習イベント「AWS re:Invent 2025」に参加してきました。re:Invent では毎年、多くの新サービスが発表され、その新サービスをすぐに体験できるワークショップやセミナーが開催されます。今回が私にとって初めての re:Invent 参加でしたが、実はラスベガスは2回目で中学生の時以来、四半世紀ぶりの訪問でもありました。
ヘプタゴンでは、AWS 認定資格のプロフェッショナルレベルを取得した社員に re:Invent 参加の機会を提供しており、私もこの制度を利用して参加することになりました。今回は、AWS HERO として招待を受けた代表の立花さんと三浦さん、3名での参加となり、経験豊富なお二人と一緒に行けたことが、この10日間を充実したものにしてくれました。
本記事では、その10日間の体験を振り返りたいと思います。
出発とハワイトランジット
ハワイ経由という選択
re:Invent が開催されるラスベガスへの航路でもっとも多いのはロサンゼルス(以後、LAと略)経由でラスベガスへむかうというものです。しかし今回、私は三浦さんとハワイでのトランジットでラスベガスに向かうことになりました。この旅程の詳細は、これを切り拓いた偉大な先人の記事を読んでください。LA 経由ではなくハワイを経由することで、以下のメリットがありました。
- 時差ボケの軽減:ハワイで体を慣らすことで、体を徐々にラスベガスの現地時間にむけて慣らすことができた
- 飛行時間の分割による体力保持:砂漠のラスベガスでの5日間を耐えるためには体力が必要です。 LA までの10時間よりもハワイまでの7時間。3時間の違いは大きい(らしい)
- 入国審査の容易さ:ハワイの入国審査は日本人観光客が多いため、スムーズに通過できます。LA の入国審査は厳しいらしい。諸説あり。
- 同行者との交流:リラックスした雰囲気の中で、同じ旅程の”はじめまして”の方でも自然と会話が弾み、仲良くなれました。
ハワイでは、現地の人が多いというパンケーキ屋さんで朝食を楽しんだり、ビーチでのんびりしたりと、本格的なイベント参加前のウォーミングアップとして最適な時間を過ごすことができました。正直、ラスベガスへ行くのが億劫になりはじめてました(笑)。re:invent にむかうメンバーが集まるので自然と情報共有もできて、有意義な時間でした。


ラスベガス到着と下見
Dry,salty,too sweet
ハワイからラスベガスへのフライトを経て、いよいよ re:Invent の舞台であるラスベガスに到着しました。

覚悟はしていましたが乾燥がすごい。。。砂漠の真ん中にある都市なので当然なのですが、先人たちの教えで「着いたら、まずは近くのスーパーで水を買え」という格言の意味をすぐに体感しました。さらには、その砂漠の真ん中にエンターテインメントだけで成り立っている街があるというスケール感に、改めて驚かされました。世界最大規模の6万人規模のイベントをする会場と宿を提供できるのはラスベガスくらいですね。
以前、訪れた際に宿泊したルクソールホテルは今も健在でしたが、Sphere のような新しいランドマークも増えており、街の進化を実感しました。Sphere では現在『オズの魔法使い』を上映しており、私も観てきました。1939年の映画を Google が中心となって生成 AI で再構築することを試みたそうで、高解像度化と画角の拡大が実現されていました。高解像度化の成果は素晴らしく、きめ細かく滑らかになっています。画角の拡大の方も天井にまで木々が生い茂る表現がなされていたり、当時の映画では表現できなかったことが実現されていました。ただ、1939年版を観てからだいぶ時間が経ってしまっているので、現代の映画のレベルとの比較になってしまい、驚きが薄くなった部分もあります。観に行く方は事前に1939年版を観てから行ったほうがいいですね。

ベネチアンホテルでの迷子
メイン会場となるベネチアンホテルは、デカいデカいと聞いてはいましたが、想像をはるかに超える広さでした。ホテル内にショッピングモールがワンフロア丸ごとあり、部屋にたどり着くまでに迷う、1km 近く歩くという、今までのホテル滞在では経験したことのない状況でした。

1日目は三浦さんの案内で会場の下見を行いました。徒歩でベネチアンホテルを出て EXPO エリアを通り、シーザーズフォーラムまで歩き、re:Invent の規模感を肌で感じました。ひとつの会場だけでも、これだけの大きさとわかり、会場の広さと複雑さに圧倒された初日でした。
飛び込みで、いわゆるタトンカチャレンジと呼ばれる”Amazon’s World Famous Chicken Wing Eating Competition”に参加してチキンウィングを食べてきました。Amazon の創業初期に社内イベントとして開催していたのが発祥らしく、参加者の3割ぐらいは日本人でした。次回参加することがあれば、ちゃんと準備して決勝を目指したいですね。

イベント開始と GameDay
6万人が集う熱気
いよいよ re:Invent が本格的に始まりました。参加者バッジは既に空港で受け取っていましたので、SWAG を受け取るところからが会場での最初のアクションでした。会場に足を踏み入れると、そこには世界中から集まった AWS ビルダーたちの熱気がありました。(AWSではエンジニアのことをビルダーと呼ぶらしい)
実は参加前から、どんな国の人たちがどれくらい集まるのか気になっていました。事前に聞いていた話では日本以外からの参加者も多いとのことでしたが、実際に会場を回ってみると、想像していたより中国人や韓国人の参加者は少なく、アジアの中では日本人が一番多いという印象でした。世界最大規模のイベントとはいえ、同じ言語を話す日本人エンジニアと出会えることは、心強くもありました。
GameDay:最も刺激的だった体験
私が re:Invent で最も刺激を受けたのは”AWS GameDay: AI-Assisted Developer Experience ft. New Relic”への参加でした。
GameDay は、チームで AWS の技術的な課題を解決していくワークショップ形式のイベントです。7つのテーマ課題が与えられ、役割分担しながらタスクをこなし、得点を獲得していく仕組みです。私は【とある架空のスタートアップが「ユニコーンを探す」SaaS を立ち上げたものの開発者がいなくなってしまった】という設定で、実際に AWS のマネジメントコンソールを操作しながら、Amazon Q Developer にも相談しながら、様々なトラブルシューティングを行っていきます。
チーム構成は、ヘプタゴンの三浦さんと私、仲の良い若手エース級エンジニアふたりの4人チームでした。
私は普段サーバーの運用を担当していないこともあり、他のメンバーの問題解決のアプローチを目の当たりにして、非常に刺激を受けました。Amazon Q Developer に相談して答えは導き出せるのですが、普段から業務として触っている面々とはまるでスピード感が違いました。
結果は60チーム中46位。正直、私が足を引っ張ってしまった部分も大きいのですが、実際のエンジニアがどのように考え、どのように問題にアプローチするのかを間近で見られたことは、何にも代えがたい経験となりました。今後、生成 AI を活用していく中でも、答えに早く正確に辿りつくには、個人の知識と経験は今後も必要になっていくことを感じました。生成 AI があっても、みんな同じスタート位置ではないということですね。昨今の生成 AI ブームの中でも「問うチカラ」の解像度が上がった気がしてます。
AI に関するキーノートとセッション
生成 AI からエージェントへ
複数のキーノートとセッションに参加しました。
今年の re:Invent では、生成 AI からエージェントへという流れが示されていた気がしてます。Frontier Agent と AWS が定義した Kiro Autonomous Agent や AWS DevOps Agent、AWS Security Agent といった Agent の発表がありました。大きなサプライズはなく、想像の範囲内の発表ではありましたが、それでも AWS がどの方向に向かっているのかを確認できたことは有意義でした。
実務に活きるサービスの発表
技術的なトレンドとは別ですが、すぐに実務に活かせる発表もありました。特に Database Savings Plans の発表は、すぐにお客様へのコスト削減提案に使える内容でした。今後もどんどん提案に使って行こうと思います。
Amazon Leo(衛星通信技術)
AWS 版のStarlinkとも言える衛星通信サービス。もともとは Project Kuiper という名前のプロジェクトでした。一般公開(GA)されてからのユースケースもそうですが、個人的には Leo をベースに AWS のバックヤードがどうなっていくかに興味があります。これまでは海底ケーブルでのネットワーク接続だったものに、低軌道衛星が加わることで、地理的制約が克服されていきます。どう変化していくのか今後もチェックしていきたいです。

Nubank(南米の銀行)の事例
GuardDuty Extended Threat Detection というサービスのセッションでしたが、メキシコ、ブラジル、コロンビアで事業展開している銀行の事例も非常に興味深いものでした。事業環境が日本とは大きく異なる中でも同じ AWS サービスを使っていることが改めて興味深かったです。
こうした事例を通じて、AWS が世界規模で様々な業界に浸透していることを実感しました。普段は日本国内に目をむけていましたが、グローバルな視点で AWS を捉え直す良い機会となりました。
Werner Vogels 氏の Closing Keynote
ビルダーとしての在り方
re:Invent 最終日のハイライトは、Amazon.com CTO であるDr. Werner Vogels 氏による Closing Keynote でした。
他の Keynote が新サービスの機能説明に重点を置いているのに対し、Werner 氏の Keynote は「ビルダー(エンジニア)としてどうあるべきか」という指針を示してくれているように感じています。
聴衆の心に響く内容で、会場全体が一体となって聞き入っている雰囲気がありました。Werner 氏の Keynote が今年で最後ということもあり、力強いメッセージがありました。周りのエンジニアたちも「良かった」と口々に話していました。
私がもっとも印象に残ったのは The Renaissance Developer の文脈にあった”THINKS IN SYSTEMS”です。私たちの日常は様々なシステムから成り立ってます。コンピュータと関係がないシステムにも通じる話で、この考え方は本当に重要だと思います。Werner 氏も宿題と言っていた論文もあるので興味ある方は読んでみてください。
エンジニアコミュニティとの交流
AWS HERO である立花さんと三浦さんのおかげもあって日本国内の AWS にかかわる様々な方と多くの交流ができました。朝の 5K Race(朝のラスベガスをみんなで走るサイドイベント)なども含め、技術セッション以外の楽しみ方も教えていただき、re:Invent を多角的に体験することができました。
AWS という共通点があることで、初対面の方とも自然に会話が弾み、コミュニティの温かさを実感した5日間でもありました。
振り返り:5日間で得たもの
学ぶことに集中できた日々
当初は、在宅勤務の延長として普段の業務も並行できると考えていました。しかし実際には、複数のキーノートやセッションが同時並行で行われており、2日目からは新しい学びを得ることに集中すべきと考えるようになりました。
組織が提供してくれた成長の機会
諸々の費用を会社が負担してくれ、ヘプタゴンは会社として参加を後押ししてもらえます。こうした機会を提供してもらえる環境は、エンジニアとしての成長に直結すると感じました。
今後の業務への活用
短期的には、データベースの Savings Plans など、すぐにお客様に提案できる内容がありました。
長期的には、AI エージェントサービスをどのように組み込んでいくか。今年は AI Agent についての新サービスが複数発表されたので、これらを社内の仕組みに取り込めないか、チームで話し合いたいと考えています。
次の世代へ
今回の経験は非常に貴重なものでした。機会があればまた参加したいという思いもあります。
ただ同時に、私よりも若手のエンジニアにどんどん参加してほしいと考えています。より大きな刺激を受け、成長の起爆剤になります。日本を飛び出して世界最大規模のイベントで得る学びは、その後のキャリアに大きな影響を与えるはずです。
コミュニティ含めてより深く AWS に触れていきたい交流を通して自分を成長させていきたい。そんな思いを強くした10日間でした。
おわりに
ヘプタゴンは「自分たちの身近な100人をテクノロジーで幸せにする」というミッションを掲げています。
今回、世界最大規模のカンファレンスで得た知見を、お客様への提案や社内での共有を通じて、少しでも貢献できればと考えています。
最後に、今回の参加機会を提供してくれたヘプタゴンの皆さん、そしてこの旅を共有できた皆さんに感謝します。ありがとうございました。「KEEP CALM and NOW GO BUILD!!」

Information
株式会社ヘプタゴンについて
「世界中の顔を知らない100万人よりも、自分たちの身近な100人をクラウドで幸せにする」を経営理念に掲げ、主に東北地方のお客様に対してクラウド化やデジタルトランスフォーメーション (DX) 支援を行っています。
地方の課題は地方の企業が解決する「ビジネスの地産地消」というビジネスモデルによって、これまで300以上のプロジェクトで実績をあげており、2020年には東北の企業で初となるAWSパートナーネットワーク(APN)アドバンストティアサービスパートナーに認定されました。
近年は AI/IoT 技術を用いた地方自治体や地場産業のDX支援にも力を入れており、先端技術を取り入れ成長する意欲的な企業とヘプタゴンが協力して、生産性の向上や業務の改善、新しい働き方の導入支援などを進めています。
テクノロジーによる事業の成長を考えられているお客様は、業種問わず是非ヘプタゴンまでお気軽にご相談ください。
会社名:株式会社へプタゴン
所在地:青森県三沢市大字三沢字堀口164-336
設立:2012年7月20日
代表取締役:立花 拓也
事業内容
・フルマネージドサービス事業
・デベロップメントサービス事業
・コンシェルジュサービス事業
認定 : APN アドバンストティアサービスパートナー
コーポレートサイト : https://heptagon.co.jp/























